午後4時の路地裏で聞けそうなラップ音楽が好奇心を刺激する。〇〇の動画の始まりだ。独身の女性がただ料理を作るだけ。なのにどうしてこれほど彼女の動画は楽しいのだろうか。

 容姿が特段に優れているという訳では無い。それこそ、そんじょそこらのクラスに1人か2人は居そうな顔だ。撮影場所だっておそらく彼女の実家だろう。窓枠や部屋のドアには、くもりガラスがはめ込まれている。キッチンはもちろんガス火だし、そのまわりは乳白色のタイル壁だ。タイルとタイルの間は少々黒ずんでいる。

 コメント欄には「昭和だ」と書かれていることが多い。しかし、それは彼女の人気の本質ではないと思う。

 申し訳程度とはいえ、施されている編集のおかげで見やすい。だから、動画を視聴することがストレスにならない。

 そして何より、彼女は素朴なのだ。我々男性が女性に求めてしまう素朴さを、他の誰よりももっている。どこにでもいそうで、ありふれていて、おごらない。それでいて動画の内容も家庭的。彼女は平成最後に現れた理想の嫁候補なのだ。素朴な女性と一緒になりたい、だけれどもなれない。そんな男性が彼女にハマるのだろう。